ハンバーガーメニュー
閉じる

新型ウイルスの新治療法、重症患者の3人に1人に効果=英研究チーム

2021年07月31日14:51:48

更新日時:2021年07月31日14:51:48

ミシェル・ロバーツ保健編集長、BBCニュースオンライン

安価なステロイド系抗炎症剤「デキサメタゾン」が、新型コロナウイルス感染症COVID-19が重症化した患者の死亡率を低下させたという発見から1年がたった。研究者たちは今、命を救う新たな治療法を見つけたとしている。

その治療法とは、ウイルスに対する体の炎症反応を抑える代わりに、ウイルスを中和する強力な抗体を静脈内に注入するというもの。多額の費用がかかる。

臨床試験「リカバリー・トライアル」では、入院中のCOVID-19の重症患者の3人に1人が、この治療法で助かる可能性が示されている。

専門家は患者100人あたり6人の命が救えると算出している。

画期的な治療法

しかし、この治療が受けられるのは、ウイルスと闘うための抗体がまだ体内で生成されていない人に限られる。費用は約1000~2000ポンド(約15万5000円~約31万円)かかる。

治験でこの治療を受けたキンバリー・フェザーストンさん(37)は、「私がCovid-19で病院に運ばれた時に治験が始まっていて、この画期的な治療を受けられたのはとても幸運だったと思う」と述べた。

「治験に参加することで、この治療法がうまくいったと明らかにすることの一端を担えてうれしい」

米製薬リジェネロンが開発するモノクローナル抗体を使ったこの治療法は、ウイルスが細胞に感染し、ウイルスが複製されるのを阻止する。

イギリスの入院患者約1000人が参加した治験では、以下の項目で大幅な減少がみられた。

  • 死亡リスク
  • 入院期間(平均4日)
  • 呼吸維持のために人工呼吸器が必要となる可能性

共同研究責任者のサー・マリン・ランドリーは、「2つの抗体を組み合わせたものを静脈内投与したところ、死亡率が5分の1に減少した」と述べた。

「治療しなければ死亡する確率は3分の1だが、抗ウイルス治療を用いればそのリスクを減らせることを発見した」

大きな不確実性

新たな治療法は、抗炎症作用のあるステロイド剤デキサメタゾンを使うものに加える形で試された。デキサメタゾンだけでも重症患者の死亡リスクが最大で3分の1低下する。

もう1人の研究責任者サー・ピーター・ホービーは、抗体療法については他の研究で効果がないとされており、これが正しい方法であるかどうかについては大きな不確実性があると述べた。

例えば、抗体が含まれた、COVID-19​から回復した人の血しょうを使用する方法は、効果が証明されていない。

しかし、リカバリー・トライアルで用いられた抗体治療には、2つの特定の抗体が大量に含まれている。これらは実験室でつくられたもので、新型ウイルスにうまく結合する働きがある。

ホービー氏は、「COVID-19の症状が進行していても、ウイルスを標的にすることで、自分では抗体反応を起こせなかった患者の死亡率を下げられることがわかったのは素晴らしい」と述べた。