リアリティ・チェック(ファクトチェック)チーム、BBCニュース
東京オリンピックの開幕まで2週間を切った。新型コロナウイルスの感染者が増え続けるなか、ほとんどの会場で無観客の開催が決まった。新型ウイルスの流行は、日本ではどうなっているのか。
オリンピックは7月23日に始まり、8月8日に閉会の予定。
日本政府は8日、東京都に4度目の緊急事態宣言を出すと発表した。緊急事態宣言の期間は12日から8月22日で、オリンピック開催は完全にこの期間に入る。
この決定を受け、東京と近隣3県では無観客で開催することになった。さらに北海道は10日、札幌で予定される競技を無観客にすると発表。福島県も同日、福島市で行われるソフトボールと野球の試合について、すべて無観客にすると発表した。
パラリンピックの日程は8月24日~9月5日となっている。観客の人数については7月16日までに決定する予定。
日本の感染状況
日本では6月下旬以降、新型コロナウイルスの感染者が少しずつ増え続けている。
厚生労働省は9日、新規の陽性者は2260人で前日比21人増と発表。7日については、2182人で前日から524人増を記録している。
医療専門家らは、大会を安全に開催するには、東京都の1日あたりの新規感染者が100人を下回る必要があると主張してきた。
東京では5月中旬から感染者が減り始め、6月半ばには一時、1日400人を割り込んだ。しかし、その後はまた増え続け、今月10日には約720人(7日移動平均、前日比33.4人増)を記録している。
7月12日からの緊急事態宣言のもと、東京都は酒やカラオケ設備を提供する飲食店には休業を要請する。提供しない店舗には、午後8時までの時短営業を求める。
床面積が計1000平方メートルを超える大規模施設には休業要請はせず、時短営業の継続を求める。
営業時間は、デパートやゲームセンターなど、客が自由に出入りできる施設は午後8時まで、劇場や映画館は午後9時までを要請している。イベントの人数上限は5000人、定員の50%以内としている。
都民に対しては、日中も含めた不要不急の外出と移動を自粛し、帰省や旅行など都道府県をまたぐ移動を極力控えるよう求めている。
ワクチンの接種状況
感染者数が増える中、東京と大阪の2大都市を中心に、大規模なワクチン接種が始まった。国や地方自治体による接種のほか、接種人員が1000人以上の企業や大学で産業医らが接種を行う、いわゆる「職域接種」も6月初めに始まった。
それでも、日本でこれまでにワクチン接種を1回受けたのは、まだ国民の約26%にとどまっている。2回の接種を完了した人は約15%。
イギリス、アメリカ、ドイツでは人口の大半が少なくとも1回の接種を済ませている。イギリスでは60%以上が1回は接種を受けている。
日本がワクチン接種を開始したのは2月で、大半の先進国より遅かった。また、承認済みのワクチンはファイザー製だけという時期が、長く続いた。
日本はワクチンに関して、国際的な臨床試験と並行して独自の試験を実施している。そのため承認に時間がかかった。
AP通信によると、関係者はワクチンへの信頼性を醸成するための措置だと説明したという。
日本では過去に他のワクチンの副反応が不安視された経緯があり、それが接種へのためらいにつながっている。
15カ国を対象にした英インペリアル・コレッジ・ロンドンの研究では、新型ウイルスのワクチンへの信頼度は日本が最も低かった。
供給不足と運搬の難しさも、接種の遅れを招いた。
日本の法律は、ワクチン接種ができる人を医師と看護師に限定している。だが接種を加速させるため、現在は歯科医師、救急救命士、臨床検査技師も特例で認められている。
報道によれば、日本はファイザー、アストラゼネカ、モデルナの各社製ワクチンを計3億回分以上確保している(アストラゼネカとモデルナのワクチンに関しては5月に製造と使用を承認した)。これは、全国民に接種するのに十分な量だ。
ただし、報道によると、河野太郎行政改革担当相は6日、モデルナ製ワクチンの供給量が当初計画から約6割減っていたことを明らかにした。減少分は9月末までに供給される予定で、9月末までの供給計画に影響しないと、河野氏は述べた。しかしこれを受け、自治体によってはワクチンの予約をキャンセルしたり、予約受付を停止する場所も出ている。
その他の日本の対策
他の多くの国と異なり、日本はパンデミック対策としての厳格なロックダウンや国境閉鎖は実施してこなかった。
政府は昨年4月に緊急事態宣言を発令したが、自宅にとどまるよう求めたのは呼びかけにとどまった。暮らしに不可欠ではない企業や店舗は営業停止を要請されたが、罰則はなかった。
いくつかの国からの入国を規制し、のちに対象国を増やした。
日本は高齢者が多く、都市部に人口が集中している。それでもパンデミックの初期は、感染の抑制に比較的成功し、死亡率も低く抑えた。
その理由については、いくつかの説が唱えられた。
- マスク着用などの安全対策を守る人が多い
- 一般的に、ハグやキスなどの密接した身体接触の機会が少ない
- 心臓病や肥満、糖尿病などの慢性疾患をもつ人の割合が比較的小さい
ただそれでも昨年は1年を通して全国的な新型ウイルスの感染流行が起こった。感染者数は昨年後半に急増し、今年1月にピークに達した。
そうした中で、政府は経済対策として「Go To トラベル」を実施し、批判を浴びた。
4月には感染者の増加を受け、東京都など10都道府県に緊急事態宣言が出された。
日本は現在、入国制限の水際対策を実施し、約160カ国の人々の入国を禁止している(例外的な場合を除く)。
2021年07月31日14:51:40