イギリスで4日、オックスフォード大学と製薬大手アストラゼネカが共同開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。
最初に接種を受けたのは透析患者のブライアン・ピンカーさん(82)。オックスフォードのチャーチル病院で午前7時半、看護師のサム・フォスターさんが注射を打った。
ほかにも、88歳の音楽教師トレヴァー・コウレットさんや、オックスフォード大学病院の小児科医、アンドリュー・ポラード医師らが次々と接種を受けた。
マット・ハンコック保健相はこれについて、イギリスのコロナウイルスとの戦いの「転換点」になると話した。ワクチンは感染拡大を抑え、究極的にはロックダウンなどの規制解除に繋がると期待されている。
この日だけで53万回分のワクチンが用意された。
しかしボリス・ジョンソン首相はこうした中、短期的にはさらに厳しい制限が必要になるとの見方を示している。BBC番組「アンドリュー・マー・ショー」でジョンソン首相は、行動制限の強化について問われ、「残念ながらおそらく、間もなくさらに厳しくなるかもしれない」と答えた。
イギリスでは3日、6日連続で5万人以上の新規感染が報告された。最大野党・労働党は、イングランド全域でのロックダウンが早急に必要だと訴えている。
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オックスフォードとアストラゼネカのワクチンはこの日、オックスフォードとロンドン、サセックス、ランカシャー、ウォリックシャーの6つの病院で接種が開始された。
保健省によると、今後はイギリス全土の一般医の診療所や介護施設などにも供給されていくという。
接種第1号となったピンカーさんは長年、腎臓疾患を抱えており、病院で透析治療を受けている。ピンカーさんは「ワクチンを受けられたことを喜んで」おり、地元オックスフォードで開発されたことも「非常に誇りに感じている」と述べた。
「おかげで今年後半に妻シャーリーと結婚48周年を祝うのが、本当の意味で楽しみになった」と、ピンカーさんは話した。
最初の注射を担当したフォスター看護師はBBCに、「とても光栄なこと」だと述べた。
2回目の接種は12週間後に
ハンコック保健相はBBCの朝の番組に出演し、「これから厳しい数週間が続くが、これが出口だ」と述べた。
また、「来週の接種」に向け、「今週前半」には次のワクチン供給が行われると説明した。
新型ウイルスのワクチンは2回接種する必要がある。しかし、イギリスでは最近の感染者数増加が国民保健サービス(NHS)に影響を及ぼしており、ワクチンの2度目の接種時期を21日後から12週間後に先延ばしにする策を取っている。
2度目の接種時期を遅らせる策はイギリスの保健当局高官も支持しており、1回目のワクチンを打った人数を増やすことが「より好ましい」としている。
イギリスでは昨年12月に米ファイザーと独ビオンテックのワクチンが承認され、接種が始まった。これまでに100万人以上が1回目の接種を終えている。
国内第1号となったマーガレット・キーナンさんは12月8日にワクチンを投与されたが、すでに2回目の接種も受けているという。
一方、オックスフォードとアストラゼネカのワクチンは12月末に承認された。こちらは一般的な冷蔵庫での保管が可能で、ファイザー製に比べて流通と保管が簡単なことが特徴。また、価格も安価だという。
ワクチン接種施設は1000件以上に
イギリス政府はオックスフォードとアストラゼネカのワクチンについて、人口全体に十分に行き渡る1億回分のワクチンをすでに確保している。
介護施設職員やNHS職員、80歳以上の高齢者が、最優先でワクチンを投与される予定だ。
保健省は一般医や各地のワクチン接種施設に対し、1月末までにすべての介護施設入居者にワクチンを受けてもらうよう通達している。
これまでにすでに接種施設が約730カ所、イギリス各地に整備されており、今週後半には計1000カ所を超える見込みだという。
2021年07月31日14:50:21