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「週100時間以上働かないと借金を返せない」 コロナ禍で苦しむ経営者たち

2021年07月31日14:53:50

更新日時:2021年07月31日14:53:50

リアナ・バーン、BBCラジオ5ライブ「ウェイク・アップ・トゥ・マネー」

「(新型コロナウイルスの)パンデミックが終われば、ほとんどの人はこれまで通りの生活に戻れますが、私たちはこの先何年もこの苦しみ続ける」

クレイグ・メイクルさんは、自身の仕事についてそう語る。クレイグさんは英スコットランド・ミッドロジアン・ダルキースで、ソフトプレイ・エリア(屋内遊び場)とサッカー施設を経営している。

会社の収益の3分の2を占めるソフトプレイ・エリアは、2020年3月から閉鎖が続いており、再開のめどは立っていない。

「このままでは本当に大変なことになる」

パンデミック以前の経営状態は順調で、年間75万ポンド(約1億1600万円)の収益を上げていたと、クレイグさんは話す。

クレイグさんと妻には、ソフトプレイ施設の建設と開発に利用した事業貸付けの最後の支払いが迫っている。

「もともと私たちに借金はなかった」と、クレイグさんはBBCラジオ5の番組で話した。

しかし、パンデミック対策の行動制限によって、メイクル夫妻は施設を閉鎖せざるを得なくなった。そして他の多くの中小企業経営者と同様に、政府の助成金や国が支援する融資といった方法で資金援助を求めた。

夫妻はスコットランド自治政府から助成金を受けた。さらに、融資制度「バウンスバック(立ち直り)・ローン」と新型コロナウイルス事業中断融資制度 (CBILS)から、合わせて10万ポンド(約1500万円)を借り入れた。

「バウンスバック・ローン」の最初の返済は、今月が期限だ。

クレイグさんによると、家賃数千ポンドも滞納した状態という。

「最大13万ポンド(約2000万円)分の家賃を滞納している。これまで素晴らしい対応をしてくれた大家さんと、これから話し合わなくてはならない。(中略)いずれ話し合わなければなりません」

夫妻の事業債務は総額25万ポンド(約3800万円)に上る。

中小企業連盟(FSB)が3月に実施した調査では、パンデミックを乗り切るために、会員企業の4分の1が追加の借金をしていたことがわかった。FSBは、現在も続く制限措置で大打撃を受けている企業が、前例のない額の負債を抱えていることを懸念している。

FSBのマイク・チェリー会長はBBCに対し、「5四半期連続で収益がないというのは前例がありません。制限措置による事業の閉鎖で収益が得られず、バウンスバック・ローンを申請せざるを得なくなっている」と述べた。

一方、英商工会議所(BCC)の経済担当責任者スレン・ティル氏は、「イギリス国内の多数の企業が持続不可能な負債のスパイラルに陥るのを防ぐには、実用的な解決策が必要」だとした。

貸し手側は、顧客を公平に扱うと同時に、納税者に何十億ポンドもの負担を強いる可能性のある政府保証の発動を回避するために最善を尽くすとしている。

「週100時間以上働かないと」

借金を清算するためには、これまでより長時間働き、雇用人数を削減する必要があるとクレイグさんは言う。

「私たちは家族経営なので、スタッフの数を減らして自分たちが働く時間を増やさないとならない」

「私は今、週に60時間、時には80時間働くこともある。なので、これからは100時間以上働かなければならない」

クレイグさんと同様、ルーシー・クレイトン=ジョーンズさんもまた、パンデミック下で政府支援のローンを組まなくてはならなかった。ルーシーさんは英南部レディングで醸造所「ダブル・バレルド・ブリュワリー」を経営している。1年半前にオープンしたばかりという。

「1年間の支払い猶予期間付きでローンを組んだ時は、それから1年たった今も行動制限が続いて、市場が十分に機能していないだなんて、思いもしませんでした」と、ルーシーさんは言う。

「今はローンを返済しようとしているところですが、市場規模が通常の65%程度になる中、ビジネスとしては継続的なコスト増に直面しています」

「お金がないと意味がないのに……十分なお金は残っていない」

「最終的には、今後2、3カ月のお金の流れを見て判断することになります。業界の現状を見ると、この状態を維持できるかはわかりません」

このように多くの企業が財務上の重要な期限を迎えている。

7月1日には、雇用主は一時帰休コストの10%を負担しなければならなくなる。また、ビジネスレート(固定資産税)の減免措置も100%から67%へと引き下げられる。

商業用賃貸物件からの立ち退き禁止措置は6月30日で終了する予定だったが、英政府は期限をさらに9カ月延長した。

「お金がないと意味がありません。今月末には家賃やスタッフたちの給与を支払わなければなりません。ですが現時点で、銀行の預金残高が足りない。最悪な状況です」と、ルーシーさんは言う。

「追加の制限措置が敷かれれば、それが必要なのは理解していますが、もしそうなれば私たちがこの事態を乗り越えられる可能性はもっとなくなってしまう」

イギリスのコロナ禍の企業借入

160万以上の企業が政府が保証するCOVID-19融資制度を利用している。制度の種類は次の通り――。

  • バウンス・バック・ローン制度(BBLS)
  • 新型コロナウイルス事業中断融資制度 (CBILS)
  • 新型コロナウイルス大規模事業中断融資制度 (CLBILS)

企業はこれらの制度を通じて、合わせて750億ポンド(約11兆4500億円)を借り入れている。