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ファイザー製とモデルナ製のワクチン、「非常にまれに」心筋炎・心膜炎と関連=欧州当局

2021年07月31日14:47:56

更新日時:2021年07月31日14:47:56

ジェイムズ・ギャラガー、保健・科学担当編集委員

欧州医薬品庁(EMA)は9日、米ファイザー/独ビオンテック製と米モデルナ製の新型コロナウイルスワクチンの副反応について、「非常にまれ」に心臓に炎症が起こる可能性があると発表した。

EMAは、新型ウイルスワクチンの効果は引き続き副反応のリスクを大幅に上回るとしているとした上で、医師や被接種者に心筋炎や心膜炎の症状に気を付けるよう呼びかけた。

心筋炎・心膜炎の症状には、胸の痛みや息切れ、動悸(どうき)などが含まれる。こうした症状が現れた人は、医師の診察を受けるべきとされている。

EMAの分析では、以下のことが分かっている。

  • ファイザー/ビオンテック製:1億7700万回の接種のうち、心筋炎が145件、心膜炎が138件
  • モデルナ製:2000万回の接種のうち、心筋炎と心膜炎が各19件

これに関連し、これまでに5人が亡くなっている。亡くなったのは高齢者か、他に心疾患がある人だったという。

「通常の治療と休養で回復」

イギリスの医薬品・医療製品規制庁(MHRA)も、これらのワクチンと心筋炎等の関連を調査していた。

MHRAは報告書で、「この副反応が起きる頻度は若い男性の方が多く、2回目のワクチン接種直後に起きる傾向にある」と説明した。

「この副反応の報告は非常にまれで、症状は大抵は軽く、通常の治療と休養で短期間に回復する」

これまでに報告されている心筋炎・心膜炎の大半は、ワクチン接種後14日以内に起きているという。

心臓が炎症を起こすリスクは非常に低いものの、イギリスで現在ワクチン接種の中心になっている若者世代の方が、発症の可能性がある。

イギリスでは、新型コロナウイルス感染症COVID-19のリスクが比較的低い子供へのワクチン接種の是非が議論されており、様々な副反応が検討材料になっている。

アメリカでは先月、心筋炎と心膜炎がファイザーとモデルナ製ワクチンの副反応として記載された。今回の発表を機に、欧州とイギリスも同様の措置を取る。

EMAは、「この副反応が起きる可能性は極めてまれだが、症状に注意することで迅速に治療を受け、合併症を避けることができる」と述べた。

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心筋炎と心膜炎の副反応は、メッセンジャーRNA技術を使ったワクチンからのみ見つかっている。メッセンジャーRNAワクチンは、ウイルスの遺伝子コードの一部を注射することで、人間の免疫システムを訓練する。

一方、ウイルスの遺伝子の一部を操作して作られる英オックスフォード/アストラゼネカ製とヤンセン製ワクチンでは、こうした副反応は出ていない。

しかしEMAは、血管から液体が漏れ出す毛細血管漏出症候群(SCLS)の既往歴がある人はヤンセン製ワクチンを打たないよう呼びかけている。