世界保健機関(WHO)は21日、新型コロナウイルスのデルタ株がこれまでに124カ国で確認されたと発表した。今後数カ月で、世界中で従来株より感染力の強いデルタ株が主流となると予想されている。
WHOは今後数週間で2億人以上が新型ウイルスに感染すると予測している。
特に欧州や西太平洋地域で感染者が増加している。
欧米の一部の国では死亡率の低下に伴い、新型ウイルス対策の規制緩和が始まっている。
一方で新型ウイルスワクチンがなかなか確保できない国や、ワクチン展開が遅れている国は、より致命的な脅威に直面している。
世界各地のBBCのジャーナリストたちが、デルタ株による被害状況や、デルタ株の拡大がもたらす影響について報告する。
インドネシア:葬儀の需要が急増
ヴァルディヤ・バラプティ、BBCニュース・インドネシア
1日に1300人以上の死者が出ているインドネシアは、アジアにおける新たな感染の中心地となっている。何百人もの人が自主隔離中に死亡した。おそらく、発症してもすぐに治療が受けられなかったり、逼迫(ひっぱく)した病院から追い返されたりしていることが要因だ。
首都ジャカルタで消防士をしているウィラワンさんは、危機が悪化していく様子を目の当たりにしている。ウィラワンさんのチームは、住宅から遺体を回収して最終的に埋葬することが任務だ。犠牲者が急増する以前は、1日に2~3件の葬儀を手配していたが、今では1日24件にまで増えている。
それほどの数の葬儀は1日に対応できない。そのため、遺族は葬儀を待たなくてはならないという。
インドネシアでは1日に5万人以上の感染が確認されており、政府は少なくとも今週末まで緊急規制を続ける方針。26日に規制措置を延長する可能性がある。
インドで最初に特定された感染力の強いデルタ株が、インドネシアで猛威を振るい続けている。政府は国民へのワクチン接種を急いでいるが、接種対象者2億800万人のうち2回の接種を終えたのは約1600万人にとどまっている。
チュニジア:ワクチン接種登録者にピザを
ラナ・ジャワド、BBC北アフリカ特派員
チュニジアは今、パンデミックが発生してから最も破壊的な影響を目の当たりにしている。
新たな感染者のほとんどがデルタ株の変異株に感染しているのか、はっきりしない。しかし、デルタ株の流入以降、感染者は増えている。
国中の病院は完全に逼迫している。酸素濃縮器が不足する中、誰を救い、誰を諦めるのか、選択を迫られる医療従事者たちが、涙を流す様子も撮影されている。
感染率が急上昇する中、ワクチン接種は非常に遅れている。接種を完了した人は人口の8%にも満たない状況だ。人権団体は政府が危機管理を誤っていると非難している。20日には保健相が解任された。
チュニジアの国営通信局はここ数日、携帯電話でワクチン接種登録をした人を対象に、1GB分のインターネット利用を無料で提供している。また、首都チュニスの有名なピザ屋は、接種登録の証明書を提示すると10%の割引を受けられるサービスを展開した。
チュニジアは欧州やアラブ諸国から酸素ボンベなどの医療品の寄付を受け、ほかの複数の国から追加支援の約束も得ているため、来月には現在の危機を脱する可能性がある。
メキシコ:危機的状況に疲弊した国民
マルコス・ゴンザレス・ディアス、BBCムンド(スペイン語サービス)特派員
メキシコはパンデミックの第3波に直面している。感染者数は1日あたり1万5000任以上に上り、年初のピークの水準に達している。
首都メキシコシティではすでに感染者の約60%をデルタ株が占め、拡大が懸念されている。
メキシコとアメリカ間の陸路による不要不急の移動制限は、昨年3月以来、月単位で延長されてきたが、両政府は21日、少なくとも8月21日まで制限を延期すると発表した。メキシコ政府は、両国におけるデルタ株の拡大が、制限延長の理由だと認めた。
メキシコの感染者はワクチンを受けていない若年層に多い。同国では18歳以上の4人に1人しか接種を完了していない。
一方で、病床使用率は65%と、パンデミックの最悪の時期にみられたような医療崩壊は今のところ確認されていない。
危機に疲弊した住民が行きかう街なかでは、一見すると日常的な雰囲気が戻りつつあるように見える。誰もが生計を立てるため、食べ物を売ったり、その他の非正規の仕事するため、毎日外出せざるを得ないからだ。
だからこそ政府には、デルタ株のリスクをよそに、行動制限を強化するつもりも、経済活動を再び停止するつもりもない。
ルワンダ:デルタ株による新たな規制
サンバ・シズゾ、BBCグレート・レイク、シニア・デジタル・ジャーナリスト
つい最近までは、ルワンダは新型ウイルスを封じ込めるための迅速で強力な対策を評価されていた。
しかし6月中旬以降、新型ウイルスの影響は悪化している。感染者数と死者数は毎週のように記録的な数に急増した。7月初旬には新型ウイルスの治療施設がすべて、満床となったとされる。
保健相は6日、国営放送局に対し、「今回のパンデミックでこれまでに経験したことのない状況に陥っている」と述べた。その2日後には、感染力や致死率の高いデルタ株が国内に流入したと認めた。
17日になると、首都キガリと8つの地区で10日間のロックダウンを実施すると発表した。しかし、感染者数と死者数はどちらも依然として、比較的高い水準のままだ。
ルワンダでは、人口の約3%に相当する40万人以上が接種を完了している。
2021年07月31日14:46:07